タイムスリップ物語 11

※明日以降は更新が遅れると思います。
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3日。
結と隼人は草津の宿を出た。
東海道ルートで江戸まで行く予定なので、
どの道不破関を通過することになる。
その不破関を越えた所に、関ヶ原という地があるのだ。
そこで戦が起こる…
隼人はまだ若干の疑問が残った。
そもそも関ヶ原という地は、狭い盆地だ。
今回は東西の諸大名が出陣している。
そんな狭い盆地に、これらの軍勢が集結するのだろうか…
更に、主君の徳川家康ほど戦の経験がある者は全国におらず、
野戦に関して言えば家康は得意な方で、何よりも指揮が上手い。
当然若手の石田三成にとっては不利になるはずだ。
関ヶ原は大坂に近いが、三成はそんな所に家康を
おびき寄せるのだろうか…
それに、結が教えてくれなかった戦の勝敗。
これがますます隼人を不安にさせた。
万が一、石田方が勝った場合は世の中はどうなる?
徳川はどうなる?
ある程度の覚悟は前もってしていたが、
こういった緊迫した時代において未来が分からないのは
怖いものだと思った。
隼人は武士じゃない。あくまで未来の人間だから、
武士の精神などは持っておらず、腹を切って死ぬことの良さも
理解できない。戦というものに対しての好感もない。
「未来って、ホントに平和だよなぁ…」
そう呟くと、結が反応して答える。
「そうだね。戦って死ぬことなんて、ほとんどないもん」
「武士は自ら潔く死ぬっていうお決まりの精神があるからな」
「美しく散りたいのかな…?」
「珍しくまともなこと言ったな(笑)」
「えっ、だって映画とかでよくそういうの見かけるから…」
「…生きてなきゃできないことっていっぱいあるのにな。
まぁ、この時代の負けた人間は生き恥を晒したくないらしい」
―――俺も、生死を迫られたら死ぬことを選べるだろうか?
おそらく、命乞いをしてまで生きたいと願うだろう。
そう考えていたら結があることを言った。
「未来の人間だったら、罪を犯したらそれを償うために
一生懸命に生きろって言われることがあるよね」
「…償いか」
この時代にはそのような理念などないだろうと思った。
たった400年程度、されど400年程度。
時代は変わるものだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・省略!

結たちが江戸についたのは7月20日頃だった。
畿内を出た後は少しペースを下げて江戸を向かったのだ。
18日ほどかかった。
その日までに東西でいろんな動きがあった。
まず、12日に石田三成佐和山にて大谷吉継増田長盛
安国寺恵瓊の三名を招いて西軍最初の首脳会議を行った。
ここで決められたことは以下の四つ↓
1、安芸の毛利輝元を西軍の総大将に担ぎ上げる。
2、三成の兄・正澄を派遣し、会津遠征軍に参加しようとする
諸将を引き止める。
3、岐阜城主・織田秀信豊臣秀頼(秀吉の子)の
後援を要請する。
4、会津遠征のため東下した諸大名が大坂に置いている
妻子の帰国を禁じて人質に取る。
毛利輝元は早速要請状を受け取り、直ちに大坂へ入った。
次に17日。
西軍は事実上の挙兵宣言を発した。
奉行の者と宇喜多秀家らも混じり、徳川家康のこれまでの
罪状を列挙して、ついに家康へ宣戦布告をした。
こうなれば東西の衝突は避けられなかった。