オリジナルストーリー

タイムスリップ物語 24

8月17日… 東軍が清洲城に到着してから早3日が経った。 一向に家康からの軍令はない。江戸を発ったという知らせもない。 そんな日のことだった。 この日も、隼人と結は暇を持て余して城下町を出歩いていた。 道中、舞はある物を発見する。 「……あ…あれって…」…

タイムスリップ物語 23

「―――誤算だった…」ここは西軍前線司令部たる大垣城。 大垣城の天守閣より遥か遠くの清洲方面の景色を眺めながら、 西軍の中心的人物である石田三成はそう呟いた。 三成のすぐ後ろに控える彼の重臣・島左近が敵の詳しい報告をした。 「14日にも、福島正則ら…

タイムスリップ物語 22

忠興は問い詰めようとした。 「何故貴様がたまに会えた。どこで会った? 屋敷か?それとも外でか」 舞は忠興の鋭い目つきに言いようのない恐怖に駆られる。 「言え」 「…外で、会いました」 「いつだ」 「っと…ひと月くらい前だったと思います…」 「たまは一…

タイムスリップ物語 21

正則を泣かせてしまった。 隼人に怒られてしまった。 舞は悲しくなった。 翌朝、東軍は小田原を発ち更に西へと向かい出す。 舞は無言で歩いた。 自分の前をゆく隼人も黙りこんでいる。 舞は心の中でこう思った。 「(そういえば私、最近調子に乗っいてたかも…

落書き

オリジナルストーリーのヒロインちゃん。元々筆ペンは中学校の時友達が使ってたのに影響されて 当時よく絵を描いてたんですけどまた使いたくなったので 復活しました(( 普通サイズ・細いサイズ・薄いタイプを組み合わせるのが 私のスタイルです。色塗りは…

タイムスリップ物語 20

隼人には、迂闊に自分のことを話すなと言われていたが、 舞は清正と関わりの深い人たちになら明かしても大丈夫だと判断した。 「ふむふむ…、何かすげーなお前!!」 正則は笑いながら頷いた。 「にわかには信じ難ぇけどお虎が信じたんだ、俺も信じるぜ」 「…

タイムスリップ物語 19

8月6日… 東軍の諸将は尾張清洲城を目指して行軍した。 舞も新たな旅装束に着替えて隼人のすぐ後ろについた。 未来人である舞にとっては、歩きで大坂〜江戸間を 行くだけでも大変な苦労だった。江戸に着いてからはしばらく 休養を取れたので体力も回復したが…

タイムスリップ物語 18

舞は戻ってきた隼人から事情を聞かされ、共に城へ向かった。 証拠品と為りうるであろうリュックを背負って。 隼人に連れられ直政が待つ部屋に入った。 直政は黙ってこちらを見上げた。隼人の指示で舞は正座する。 しばらくジロジロと見つめられたがやがて直…

タイムスリップ物語 17

8月5日夕方…小山から慌ただしく引き返してきた東軍諸将は この日、江戸に一泊することになった。 翌朝にはまたすぐに出発するらしい。 江戸城下町が急に騒がしくなったため、舞は 戸口から外の様子を伺った。 「すごい…見て、お侍さんがいっぱいいる」 後ろ…

タイムスリップ物語 16

「たまさんが死んだ……?」舞は隼人から大坂の事を聞かされた。 「え…どういうこと?何で?」 舞は開いた口が塞がらなかった。 「石田三成が挙兵した。そこで、大坂にいる諸大名の妻子を 人質に取ろうとしていたところ、人質になることを拒んだ 細川夫人は自…

タイムスリッブ物語 15

家康は、もう一人とある大名を呼びつけた。 細川越中守忠興である… 忠興は、父親と同じく文化人として知られ、 さまざまな道に長けた人物である。 しとやかな一方で非常に短気で嫉妬深い一面がある。 忠興がやってくると、 家康は辛そうな面持ちで話し始める…

タイムスリップ物語 14

舞はこの後も幸江についてたくさん聞いた。 幸江は30歳くらいの時に、過去へ飛ばされた。 非常に前向きな性格だったので、2、3日は橋の下などで 野宿をしたり山菜を取ったりして何とか 生き延びていた時に、一人の優しい農夫が彼女を 匿ってくれたという。そ…

タイムスリップ物語 13

「幸江さんいらっしゃいますか?隼人です。ただいま戻りました」 夕方、舞と隼人は江戸郊外のとある農家を訪ねた。 ここが、10年前幼い隼人を拾ってくれたという 女性が住む家らしい。 名前は、原田幸江という。 隼人が中へ入って確認すると、舞を手招きした…

タイムスリップ物語 12

20日の昼、ようやく江戸へ到着した舞と隼人は 江戸の城下町に入った。 後の東京とは見当もつかないくらいの閑静で質素な町並みに、 舞は驚嘆した。 「江戸って、もっと賑わってる感じのものをイメージしてたけど…」 隼人が突っ込む。 「それは多分もっと後の…

タイムスリップ物語 11

※明日以降は更新が遅れると思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3日。 結と隼人は草津の宿を出た。 東海道ルートで江戸まで行く予定なので、 どの道不破関を通過することになる。 その不破関を越えた所に、関ヶ原という地があるのだ。 そ…

タイムスリップ物語 9

旧暦7月2日―――――。「やっぱちょっと急ごうか」 隼人はそう言って走る準備をした。 「は、隼人君…まさか走って行くつもり?」 「舞が折角馬に乗ってるんだし」 「私、下りようか」 「いいんだって。ひとまず近江の草津まで早足で行こう。 乗り慣れてないお前…

タイムスリップ物語 10

2日の夕暮れどき、どうにか舞と隼人は草津に着くことができた。 「今日はここで一泊しよう」 隼人はそう言って、宿を取り馬を問屋に繋げてから、 部屋に入った。舞も後に続いた。 「ねぇ、草津って何県…?」 「知らないのかよ」 「…ゴメン。私、歴史はあんま…

タイムスリップ物語 8

「清正さんもそうだったんだけど、この時代の人たちって 普通みんな頭のてっぺんを剃って丁髷にしてるんじゃないの?」舞の質問に隼人は笑って答えた。 「俺も最初ここに来たときそう思ったよ。 服装以外どう考えても戦国時代じゃねーなって! でも、ちゃん…

タイムスリップ物語 7

大坂の城下町の外れまで来て、舞は馬に跨った。 「わぁースゴい!スゴいね隼人君!」 「…スゴいのか?」 舞は乗馬が初めてだったらしく、目を輝かせている。 「ホント、昨日までメソメソ泣いてたのが嘘みたいだな」 隼人のこの些細な一言で、舞の心にまた不…

タイムスリップ物語 6

居間へ行くと、もう清正たちは帰国の準備をし終え、 舞たちが来るのを待っていた。 そこには、二人分の朝餉(朝食)が用意されていた。「来たか」旅用の着物を纏ってあぐらをかく清正は早速二人を座らせた。 「着物は不自由ないか」 「あ、はい。ぴったりで…

タイムスリップ物語 5

※来月上旬は投稿できそうにないので今のうちに量産中。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「しかし、石田治部少輔が挙兵するというのは真でしょうか…」 舞たちを部屋に行かせた後、加藤屋敷では清正と その家臣たちとの間で会議が行われた。…

タイムスリップ物語 4

互いに呆気にとられている舞と若者をよそに、清正は提案した。 「この変わり者の娘の故郷が江戸にあるそうなのだが、今は この通り、関所の監視が厳しくとても女子の身一つでは 恐くて行けないらしい。だが徳川の使者たるそなたならば安心だ。 加藤家の名の…

タイムスリップ物語 3

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「…ってことなんです」「うーむ… 」清正は腕を組んで首を傾げていた。 「やっぱり…嘘っぽいですよね…」 「そうだな」 「でもこれ以外に考えられないんです」 「俺には信じ難い話ばかりだ。なぁ、義太夫」 …

タイムスリップ物語 1

東京の、とある普通科高校の2年生達が、7月始めに 近畿方面への修学旅行に来ていた。 今回の物語の主人公となる相原舞も、その中の一人。 新幹線で大阪に着き、初日は午前中京都で大学訪問をした後、 それぞれのグループで夕方5時までの自由行動が許され…

タイムスリップ物語 2

「お前、どこへ行くつもりだ?」まるで侍のような出で立ちをした男に話しかけられて 舞はたじろぎながら返答する。 「ちょっと、大阪城まで…」 「何、大坂城に?」 長身の男は眉を潜めて言い返す。 「お前みたいな怪し気な女子が入って良い場所ではない。 そ…